前項では、日々の業務に即効性のあるロジカルシンキングスキルとして、MECEの概念を説明しました。相手にモノゴトを伝える際に、伝えるべき内容に即して適切にグルーピングし、より理解を深めて貰いましょうという内容です。
本項では、MECEと同様にロジカルシンキングの手法として有名なピラミッドストラクチャーを紹介致します。

 

 ピラミッドストラクチャー

 

ピラミッドストラクチャーとはロジカルシンキングの代表的な考え方のひとつです。ロジカルシンキングの根底にある概念は、「効果的に目的を達成する手段」です。そしてこのピラミッドストラクチャーは最も覚えやすく、最も効果的に目的を達成することが出来る強力なツールとなります。

 

まず一番初めに覚えて貰いたいことは、「三角形」と「マジックナンバー3」でこのピラミッドストラクチャーは形成されているということ。そして非常にシンプルな下の概念図を頭に叩き込んでください。

ピラミッドストラクチャーとは、この図に表されているとおり、三角形の頂点に「目的」を据えます。そしてその「目的」を達成するために必要な「戦略」がそれを支えます。そしてその戦略を達成するために「タスク」が存在します。ときに戦略やタスクが3つ以上存在する場合もあるかとは思いますが、極力「マジックナンバー3」の3つまで絞り込んでください。

 

これは、自分の頭の中で戦略やタスクの優先順位付けや、取捨選択を実施して、効果的に目的に対して向き合う大切なステップです。また、誰かに自分の目的達成のためのステップを説明する際にも各項目を「マジックナンバー3」で説明したほうが、印象と記憶に残ることが科学的にも実証されています。

 

「3」は記憶するのに適していて、4つ以上になると記憶に薄れ、2つ以下だと具体性に物足りない

 

 ピラミッドストラクチャーの考え方

 

では早速、ピラミッドストラクチャーの考え方を説明していきます。まずあなたの「目的」を一言で言い表します。

 

  1. 「目的」を設定する
  2. 「目的」に対してブレインストーミングを実施して、思いつく限りの戦略とタスクを書き出す
  3. ブレインストーミングで書き出したアイテムを「マジックナンバー3」に整理して、ピラミッドに埋め込んでいく

 

単純ですよね?ピラミッドストラクチャーは概念さえしっかりと覚えてしまえば、非常に使いこなしやすいロジカルシンキングツールなのです。1点だけ注意して欲しいのは、ブレインストーミングとマジックナンバー3の決定に「時間」をかけて欲しいことです。なぜなら戦略とタスクは思いつかなければでてこないからです。一晩寝て再考したり、場合によっては家族・友人・同僚に相談しても良いかもしれません。フレッシュな人間に意見を求めると、案外、目からウロコの良案がでたりするものです。

 

ついでにもう一点。目的、戦略とタスクのレイヤー(層)が正しいか、チェックすることもお忘れなく。目的設定を間違えていたり、タスクが戦略になってしまっているケースが多く見られます。これは、人間は目的に対して、直近でやるべきことに注目しすぎて、視野が狭くなりがちであるため、起こってしまいます。

 

例えば、あなたは、日々顧客リストの上から順番に電話をかけて、セールスコールを実施しています。しかし、最近、雑用を上司から押し付けられて思うようにセールス電話に時間がとれません。このようなケースの場合、多くの方が目標を「セールスコールを数多くこなす」を「目的」とし、「戦略」に「セールストークの雛形作成」、「雑用のマニュアル作成」をあげるかもしれません。しかし、本来であれば、「目的」は「営業成績の向上」とすべきです。そして戦略に「セールスコールを数多くこなす」のほかに、「販売促進のためのWEBサイト作成」や「SNSの有効活用」を掲げるべきです。先にたてた、「セールストークの雛形作成」、「雑用のマニュアル作成」は、あなたの「目的」に対しての「タスク」にすぎません。このように今現在の状況に熱を上げて視野が狭い状態ですと、効果的なロジカルシンキングは出来ません。自分が直近で困っていることや、心の中を占めてしまっていることが「タスク」レベルになるように、「戦略」と「目的」は設定すべきです。

 

もうひとつ例をあげましょう。これは、「キャリアプランの磨き方」でも例にとった、目的を「キャリアアップ」に据えた場合のITエンジニアのピラミッドストラクチャーです。

 

この例では、コールセンター業務3年目の社会人が自身のキャリアについてロジカルシンキングをしました。彼は当初、自分の得意分野であるWindowsの上位エンジニアにキャリアアップしたいと考えました。しかしながら、会社のポジションの空き状況や、転職なども視野にいれ、仮にWindowsの上位エンジニアになれなかった場合にも、自身の「目的」が達成できる「目的」と「戦略」を立案し、日々、その戦略を遂行するための「タスク」をこなしはじめた。という例です。上司や転職エージェントに自分のキャリアプランを話す際にも、ここまで明確に目的・戦略・タスクが設定されていれば、あなたはピラミッドの上から順番に説明すればよいだけですので楽ですよね。

 

繰り返しになりますが、ピラミッドストラクチャーは非常にシンプルで覚えやすく、効果的なロジカルシンキングツールです。しかし、目的・戦略・タスクの設定や洗い出しには細心の注意が必要で、時間をかけるべきです。はじめのうちは、自分が「心の中で一番労力を費やしている事」を「タスク」にして、「戦略」や「目的」のレイヤーをボトムアップする形で決定しても良いかもしれません。ロジカルシンキングは「効果的に目的を達成する手段」です。あなたの目先の煩わしいモノゴトなど、真の目的を見定めてしまえば、些細なコトガラになるかもしれません。まずはピラミッドストラクチャーをチラシの裏に書いてみることから、是非始めてみてください。


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